2020年11月1日のつぶやき

【副社長の杉川が綴るつぶやきブログ・・・第29回】
オンラインニュースでこんなニュースが目に止まりました。
コロナで大量発生「服の在庫処分」にみる業界の地殻変動
今回は「コロナの影響で」という文脈になっていますが、
これはコロナの影響がある以前からの問題です。
アパレルの在庫廃棄量は日本だけでも年間100万トンと言われています。
100万トン、、、天文学的数字で想像もつかないですね。
そこで色んなものの重さを調べてみました。
大型バス:10トン
新幹線1両:44トン
東京タワー:4000トン
初代ゴジラ:2万トン
100万トンってどれだけ、、、ってなりますね。
世界となるともう数字を出すのも嫌になりますし、これが毎年だと思うと。
イトバナシでは絶対に服の廃棄はしません。
刺繍職人さんや縫製職人さんが丁寧に仕上げた服を廃棄するなんて、とてもじゃないですが、できません。


でもアパレルで仕事をしていると、在庫が全く出ないように服を作ることは、非常に難しいです。
イトバナシの規模でも難しいのだから有名ブランドで生産量の多いところになると、より難しいことだと思います。
この解決策のひとつが「受注型生産」だと思います。
イトバナシでも初期のころは受注生産にしていましたし、今でもその形を模索しています。
でも「洋服はオーダーするものだ」という文化はすっかりなくなっており、その中でビジネスとして受注生産を基本にするのは、そう簡単ではありません。
イトバナシくらいの商品数でも、やはり売れる商品と思ったより売れない商品が出てきたりします。
でもイトバナシの生産量であれば、服にする予定だった生地をストールで販売したり、生地をそのまま販売したり、あるいは服も根気強く売り続けたらなんとか売り切ることができています。
でも、どうしても困るものがあります。
俗に言うB品と呼ばれる商品たちです。
手仕事で作られる刺繍生地は、たくさんの工程と時間をかけて作られます。
基本的には生地も手織りで染めも手作業、そして刺繍ももちろん手作業です。
そうすると、それだけ商品の品質にムラが出ます。
色むらもありますし、ときには生地に穴が空いてしまったり、刺繍の止めを忘れたり、ほつれてしまうこともあります。
これらのエラーは、もちろん確率を減らしていくように職人さんに求めていますが、ゼロにすることはできないと思っています。
もちろん検品体制を強化してそういった商品を現地ではじくと見た目はゼロにできますが、本質的にゼロにすることはできません。
イトバナシの刺繍商品の中にも、刺繍のほつれや下書きの残り、生地の穴あきなどがよくあります。
こういった商品をどうするのか、とても悩みます。
もちろん、現地の刺繍チームには「このキズは日本では受け入れられないから改善してほしい」などは伝えて
刺繍職人のみなさんも日本用だと気をつけて刺繍をしてくださいます。
それでも、ゼロになることはありません。
そういったキズや汚れのある商品をどう扱うのが良いのか、最近よく考えます。
これはダメだと言ってインドに戻すことは簡単です。
でもそれだと結局は「生産者が消費者に合わせる」という今の偏った関係から抜け出すことができません。
 
本当にちょっとした汚れや、ほつれ、小さな穴です。
「あー、それくらい仕方ないよね」という「消費者が生産者のことをちょっとだけ想像して受け入れる」という姿勢も必要なのかもしれません。
 
まだ形にはできていませんが、イトバナシではこういったちょっとした汚れや、ほつれ、小さな穴のある商品を「愛嬌品」として通常商品と一緒に販売できないかと思っています。
百貨店等での販売は難しいので、まずは自社店舗 (奈良五條店、広島志和店) での販売を考えています。
モノづくりブランドとしては非常識で甘い考えかもしれません。
それでも「つくる人」と「つかう人」の暮らしが豊かになる社会づくりを目指して、チャレンジを続けていきたいと思います。