2020年8月15日のつぶやき

【副社長の杉川が綴るつぶやきブログ・・・第29回】
前回に引き続き、イトバナシの予約型店舗オープンに絡めて、思うところを書き留めておこうと思います。

イトバナシの予約型店舗は、奈良五條店も広島志和店も、古民家をリノベーションして活用しています。

奈良五條の方は地方創生活動を行なっているゴジョウチャレンジさんがリノベした物件に間借りしての店舗運営です。

広島志和は、私が5年前から管理を始めた「ほたる荘」と呼ばれる茅葺古民家の蔵をリノベーションしてアトリエとしました。

以下に書くことは「ほたる荘」での活動から思うことなどが中心になりますが、おそらく五條の古民家活用も、同じような要素が含まれていると思います。

ほたる荘は広島県東広島市の志和町志和堀にある築100年ほどの茅葺民家です。
志和堀は市街化調整区域ではありますが、保存地区ではありません。
そんな場所に、現役の茅葺民家が複数残っている、珍しい地域です。

でも、ここ15年ほどで半分以下になっており、何もしなければ消滅する日も近いかもしれません。

私がどうやって志和堀を知り、茅葺民家に出会ったかはまた改めてお話をするとして、今日は、ほたる荘に出会ってから活用を開始するまでに考えたことを書き綴ってみようと思います。
ほたる荘は、茅葺民家です。
要するに「家 (イエ)」です。

私が関わり出したときには空き家となって7年ほどが経過しており
有志メンバーにより不用品の廃棄や掃除が終わったところでした。

さて、この建物を使って何をしようかと考えた時に、まずは目的と目標を設定しました。

目的:茅葺民家を残すこと
目標:100年後もこの茅葺民家が残っている状態を目指す

シンプルですね。
茅葺民間の保全活動なので、目的は当然、茅葺民家を残すことです。
目標は、それに数字目標を入れた感じです。
築年数が約100年なので、もう100年と。それだけです。

私は大学の研究者でもありますから、課題(原因)を明確にしたくなります。
茅葺民家を残すための手段を考える前に、茅葺民家を残すという行動に出ないといけなくなった原因、つまりは、茅葺民家が放っておくと消えてしまう理由。
これを私なりに考えました。

とっても不思議だったんです。
茅葺屋根って、紀元前からあるんですよ?
日本だと縄文時代からあったと言われていますから、
この情報が正しいとすると、茅葺屋根は1万年以上の歴史を持っていることになります。

つまり、1万年以上も、それで事足りた、ということになります。
それが、この50年ほどで一気に瓦屋根になり、今ではセメント瓦やスレートに移行していっています。

理由は、瓦や最近の屋根が、茅葺に比べると便利だから?安いから?
ストレートに言うと、ビジネスになったからだと、思います。

茅葺屋根は人々の暮らしの中の仕組み「結 (ゆい)」のひとつに組み込まれており
地域全体で管理していたと聞きます。

農作業の合間に茅を貯めて乾燥させ
時期がきたら「今年は〇〇さんの家を吹き替えよう」と
茅葺職人さんを中心に地域総出で葺き替える。

次は△△さんの家で、その次は□□さんの家、、、。


ひとりでできないことはお互い様の精神でみんなで負担を請け負っていく。

それが地域の基本だったと思いますし
家の維持管理はその代表だったのだと思います。

しかし今は、家は完全に個人の所有物であり、
その管理も個人が全てを負担しなくてはいけなくなりました。

人間の能力が急に変化したりパワーアップするわけではありませんから
家をたった一人で管理、維持することができるはずはありません。

ではどうするかというと、専門業者にお金を支払って任せることになります。
 
「お互い様」の中に含まれていた様々な価値が
お金に換算されたと考えることもできます。
 
そうすると何が起こるかというと、
専門業者さんのビジネスが成り立つかどうかが
何よりも大切になります。
 
その結果、便利でコスパのいいものが採用されるようになり、
そういったものだけが世の中に残ることになります。
(これが私が茅葺民家を残したい理由のひとつなのですが、その話はまた今度。)
 
このような状況の世の中で
どうやれば茅葺民家をもう100年残すことができるか。
 
お金があれば確かに維持していくことはできます。
なので例えば、私がほたる荘に住んで家賃を支払い続ければ
維持していくことはできます。
 
当初は、私がほたる荘に暮らすことを本気で考えました。
 
でも、ふと思いました。

何らかの事情で私がその家で暮らすことができなくなったら?
 
また、振り出しに戻ります。
 
これでは茅葺民家の延命措置をしているだけで
何の問題解決にもならないのです。

話を少し戻しますが、
"ひとりでできないことはお互い様の精神でみんなで負担を請け負っていく”、
これがひと昔前までの地域コミュニティの基本だったのです。

この仕組みが崩れ、例えば家の維持管理の様々な負担が個人にのしかかったことが
不便でコスパの悪い茅葺民家が消えてしまった根本原因なんです。
(茅葺民家だけでなく、様々な伝統や文化が消えている原因でもあります。)

なので、茅葺民家をもう100年残していくには
茅葺民家の維持管理で発生する様々な負担を多くの人で分担する必要があると考えました。

こうやってほたる荘の活用コンセプトの柱のひとつができました。


多くの人が関わる場所にする。


シンプルです。
大切なことは大抵、シンプルです。
さて、話が長くなってきました。
ほたる荘の活用コンセプトのもうひとつの柱については、
次のつぶやきで書きたいと思います。